便失禁に関する悩みを解決していただくために、多く寄せられている質問を4つの項目に分類し、Q&A形式で回答いたしました。
各Q&Aについては、必要に応じて本サイトの解説文や関連事項にリンクされております。必要に応じてご活用ください。
便失禁・症状に関して
- 便が漏れるのは加齢によるものでしょうか?
- 便失禁の原因は様々です。加齢だけでなく、出産時に排便のコントロールに関わる肛門括約筋という筋肉が傷付いたり、直腸がんの手術の影響や排便に関する神経の障害、過敏性腸症候群など原因はいろいろあります。
- 下痢のような症状で便が下着についていることがあり、心配で仕方なく外出をためらっています。便失禁なのでしょうか?
- 便失禁の症状は様々で、下痢のような液状の便が漏れたり、固まった便や少し下着が汚れる程度の少量の便でも漏れる場合があったりと様々です。便意を感じてからトイレに着くまでに便が漏れてしまうくらい切迫性を伴う場合は「切迫性便失禁」、逆に便意がないのに漏れてしまう場合は「漏出性便失禁」と呼ばれています。両方の症状を持っている方もいらっしゃいます。症状や原因によって異なった治療法がありますので、専門医へのご相談をお勧めします。
- 便漏れがあるたびに下痢止めの市販薬を飲んで対処していますが、効かないこともあります。市販薬で対処する場合の注意事項はありますか?
- 薬による治療を行う際は便の固さの調整を行うことで症状の改善を図りますが、便失禁には薬以外にも様々な治療法があり、原因や症状によって適切な治療法を選択する必要があります。
- 漏れるのは時々です。そのままにしておいて、自然に治ることはありますか?
- 便失禁の症状は、その頻度や漏れる量なども人によって様々です。自然に治ることもありますが、「あれ!?」「ちょっと変だな」という便漏れの症状が1ヶ月以上続いたら、その回数が少なくても一度専門医を受診することをお勧めします。治療を行うことで症状の改善が期待出来ます。
- 女性の患者が多いと聞きました。男性でも便失禁になりますか?
- 患者数の男女比は、男性:女性=1:3と言われていますので、確かに女性の方が多いです。それは、女性の方が肛門括約筋が弱かったり、出産による肛門括約筋や骨盤底筋への影響があったりすることが原因と考えられています。しかし男性でも、直腸がんや痔などの手術あるいは過敏性腸症候群などが原因で便失禁になる方がいらっしゃいます。
- 出産経験があると便失禁の予備軍になるのでしょうか?
- 自然分娩は、主な発症原因のひとつとされています。出産時に肛門括約筋や神経が傷付いてしまうことがあるためです。30代以降の働きざかりで・子育て中の女性にも多く見られる症状で、珍しいことではありません。また、出産後10年、20年経ってから便失禁の症状が現れるケースも少なくありません。
- 尿失禁なのですが、将来便失禁にもなりますか?
- 尿失禁だからといって将来必ず便失禁も発症するとは限りませんが、尿失禁の患者さんの中には便失禁がある方も少なくありません。また、ご家族にも相談できずに悩まれている方もいらっしゃいます。多くの方が治療に取り組んでいますので、ひとりで悩まず、是非一度、専門医にご相談下さい。
日常生活について
- 運動はした方がいいですか?
- 運動は排便機能に良い影響を与えるとされています。適度な運動は生活のリズムを整え、健康を保つ上でも大切です。無理のない程度に行い、全身の健康維持を心掛けましょう。
- 食べてはいけないもの、または控えた方がいいものはありますか?
- 食物繊維を多く摂取すると、便が固形化されます。軟便だと便が漏れる頻度や程度が高くなりますので、便を硬めにすることで便失禁の改善が期待できる場合もあります。また、ビールを代表とするアルコール摂取は便を柔らかくするので、無理のない範囲で控えてください。コーヒーなどのカフェイン入りのものは腸の蠕動運動(ぜんどう)を促す効果がありますので取りすぎには注意が必要です。
病院(受診~治療) について
- 治療を受けることでどのような効果が期待できるのでしょうか?
- まず、誰にも言えなかった悩みを医師に打ち明けることで、表情が明るくなり、心の安定が図れるようになったとおっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。また、自己判断ではなくその方に合った適切な治療を受けることで症状が改善し、外出の回数や範囲が広がり、治療前よりもアクティブな日々を過ごされている方も多くいらっしゃいます。
- どの程度の症状になったら受診すればいいですか?
- 生活に支障をきたすまで我慢する必要はありません。「ひょっとして」と思ったら一度専門医に相談してみましょう。
- 最初の診察では何をしますか?
- まず、日頃の食事・排便状態と便失禁の症状・程度について伺います。そして、手術歴や出産歴、他に通院中の病気や内服中のお薬についてもお聞きします。また、肛門の筋肉や直腸の状態を触診することもあります。
- どんな治療が行われるか不安です。
- 診断結果から、それぞれの患者さんの症状や状態、生活スタイルに合わせた治療法が選択されます。まずは、生活習慣の見直し、お薬による治療を行うことが多いですが、肛門括約筋を鍛えるリハビリ療法を行う場合もあります。状態によっては、肛門括約筋の修復手術といった治療や、2014年から日本でも行えるようになった、排便に関する神経に電気刺激を与えるSNM(仙骨神経刺激療法)という治療もあります。いずれにしても症状に合わせて適切な治療を医師と選択することになります。
SNM(仙骨神経刺激療法)について
- SNM(仙骨神経刺激療法)は、具体的にどんな治療法ですか?
- 2014年4月から保険適用になった新しい治療法、SNM(仙骨神経刺激療法)は、おしり付近にある排便に関係する神経に電気刺激を与えて、便失禁症状を改善します。刺激電極のみを植込む試験刺激手術と刺激装置を植込む手術の2段階に分かれており、試験刺激で効果が確認出来た方にのみ刺激装置を植込みます。従って、効果がなかった場合は、刺激電極を取り除いて元の状態に復帰出来ます。短期間の入院・手術が必要ですが、欧米では便失禁の有効な治療法として20年程度の実績があります。
- SNM(仙骨神経刺激療法)による治療は痛いですか?
- 手術直後は、電気刺激装置の植込み部分など手術部分に少し痛みが出る場合もありますが、間もなく改善します。電気刺激は、刺激している感覚はありますが、痛いということはありません。また、手術後に医師と患者さんそれぞれで刺激の強さを調整することが可能です。
- SNM(仙骨神経刺激療法)の治療には副作用はありますか?
- どんな手術でも同じですが、手術部位が化膿するの可能性はあります。また、電気刺激は慣れるまで気になる方もいらっしゃいます。
- SNM(仙骨神経刺激療法)は、どの程度の効果がありますか?
- 試験刺激で効果を確認出来た方に限れば、刺激装置植込み術を受けた方の8割前後で便失禁の症状が改善したとのレポートがあります。(MDT3110国内臨床試験結果より)