脳、神経、筋肉が連動して、排便をコントロールしています。
便失禁について知る前に、まずは人間の体内で行われる排便のしくみを理解しておきましょう。
口から摂取された食物は、食道を通過した後に胃で消化され、次に5~6mの長さを持つ小腸へと移動します。この小腸を通過する過程で、食物の栄養素が吸収されます。その後、1.6mほどの長さの大腸に到達し、水分が吸収され、栄養素と水分が吸収された残りカスが便となって直腸の手前のS状結腸にためられていきます。
S状結腸にためられた便は、朝の目覚めや食事摂取などの刺激で生じる強力な蠕動(ぜんどう)運動によって一気に直腸に移動し、直腸の壁がそれを感じて神経を通じて脳に伝達し、「トイレに行きたい」という便意を感じさせます。
直腸にある便によって便意を感じたり、その便意を我慢するのに欠かせないのが神経の働きです。直腸や肛門の感覚を脳に伝え、脳や脊髄から直腸や肛門に指令を送る神経が、排便のプロセスにおいて重要な役割を果たしています。つまり、この神経を通して「伝達」がうまく伝わらなかったり、また指令が伝達されても筋肉が正常に機能しないと、便失禁を生じる原因となります。