日本人の20歳から65歳の健常者約300人を対象にアンケートをした結果、4%の人が月に1回以上の便失禁があると回答しました*1。また、65歳以上の在宅生活者約1500人を対象にしたアンケートでは、7.5%の人が月に1回以上の便失禁を経験していることがわかりました*2。これらの結果をみても便失禁で悩んでいる人がいかに多いかがわかります。
便失禁というと高齢者や介護を必要とされている人が多いと思われがちですが、実はお勤めや子育て、家事などの日常生活を送っている女性にも多くの患者さんがいます。ある病院に便失禁のために来院された患者さんのうち、約半数は30代から60代の女性だったという報告もあります*3。
30代以降の女性に便失禁が多い理由のひとつに、出産時の肛門の筋肉(肛門括約筋)や神経のダメージが挙げられます。出産直後から便失禁が始まった人もいれば、出産から何年も経っているのにある日突然、便失禁の症状が始まった人もいます。便失禁は、決して高齢者だけの病気ではなく、活発な日常生活を送っている方も含めてすべての人が経験する可能性のある病気なのです。
*1 味村俊樹 ほか:本邦の労働人口における便失禁の頻度に関する検討.日本外科学会雑誌.104:538.2003
*2 Nakanishi N et al:Urinary and fecal incontinence in a community-residing older population in Japan.J Am Geriatr Soc 45:215-219,1997
*3 山名哲郎:当院における便失禁の診療の現状, 月刊消化器科46(6):618-624,2008